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統合失調症の母から逃げて!精神科医・魂の叫び

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うつ病、統合失調症、不安障害など、生涯を通じて5人に1人が心の病気にかかると言われています。統合失調症の母を持ち、自らもうつや摂食障害に苦しんだ児童精神科医の夏苅郁子さん(62歳)※に、心の病を抱える家族を持つことについて伺いました。

心の病は、誰もが人生のどこかで出合う病気

患者数の多さから、平成25年には五大疾病のひとつとなった精神疾患。発達障害や統合失調症、気分障害、不安障害、認知症などを総称する心の病です。

「そもそも精神疾患は原因が特定できていません。なので、病院に行けば必ず解決するわけではありません。うつ病も抗うつ薬が出ますが、それは過去の症例からこの薬が効くようだという仮説に基づいているだけなのです」と児童精神科医の夏苅郁子さん。それぞれ症状が似ていることや、明確な原因が特定できないため誤診が起こりやすく、病気への理解のなさから生まれる世間の偏見が今も根強く残っているといいます。

また法律上でも、精神医療は他の医療とは異なる扱いでした。平成25年に改正されるまで、保護者が治療を受けさせる義務等を負う「保護者制度」があったのです。「精神疾患は人間関係に深く関わる病気です。人間関係で一番濃いのは家族であり、患者との関係性に葛藤を抱えるケースが多いです。さらに法律でも、家族は過剰な責任を課されてきたといえます」

「心の病は明日家族がなるかもしれないし、明日はあなたかもしれない。あなたの人生のどこかで出合う病気です」

統合失調症の母を持ち、苦しんで

夏苅さん自身も統合失調症の母がおり、その存在を長年受け入れられず葛藤を抱えてきました。夏苅さんが10歳の頃、母は統合失調症を発症。

「どんな洋服も作れて裁縫が得意、魔法のように料理を作る、家事上手で美人だった母は全く別人になりました。父は愛人をつくりほぼ家に帰らず家にお金を入れない人だったので、そのストレスから不眠症になり発症したようです」

ネズミが走るほど汚れている部屋で夜は眠らず、台所の一角に座ってタバコを吸い一日中独り言を言う母親。唯一毎日夕食だけは作ってくれたそう。

「父は母の病名を教えてくれず、子どもながらに人に言えない病気だということだけ理解していました。今でこそ恨むべきは病気だと分かりますが、当時は変化を理解できず母をひどく自己中心的な人だと思っていましたね」

夏苅さんが17歳のときに母親が2度目の入院をしたことをきっかけに、両親は離婚。北海道の実家に帰った母親とは10年以上絶縁状態に。「手に職をつけて自立したい」と夏苅さんは医学部に入学。しかし、在学中に自身も摂食障害と重度のうつから2度の自殺未遂を起こし、7年間精神科にかかり、過剰な投薬と副作用に苦しみます。

「医学生ですから、母が統合失調症で、遺伝の可能性があることはわかっていたんです。だから母の存在を知られるわけにはいかないし、否定する気持ちは募る一方でした」 

夏苅さんは精神科医になった後も、母親が統合失調症であることを明かしませんでした。現在のように、母親のことを人前で語るようになったのは、母の死後2年経った50代の後半のことです。きっかけは、漫画『わが家の母はビョーキです』の作者中村ユキさんとの出会いでした。

「精神療法の原点といいますか、同じ境遇の人と語り合うことで母を受け入れられました。『病気を受け入れましょう』と、患者さんと家族には診察で言いながらも何よりもこの病気の怖さや、偏見を恐れていたのは私自身だったんです」

現在、夏苅さんは家族、患者、医師としての立場から患者と医師が対等になる医療現場の改善を目指しています。公表したことをきっかけに夏苅さんの元には毎日のように、精神疾患の家族がいる人から手紙が届いています。中には、「親が精神疾患だから一生面倒を見て、子どもとしての義務を果たさなければならないのか」と訴える手紙も多いそう。

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